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日々の戯言、腐女子的日記
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Act 2.5

  カレカノ。


 無駄に広いキャンパスの片隅、日を避けるための屋根と簡単な椅子とテーブルの設置された休憩所。ちょうど昼時の時間、藤代と同じ学部の友人の4人が、おのおのの昼飯を手に集まっていた。
「あれ?藤代、携帯変えた?」
 鞄から取り出した携帯がいつものと違うことにいち早く気付いたのは森口だ。
「うん。auにしたんだ。番号はそのままだけど、メルアドは変わったからまた後で送っとく」
 そう言って握られた携帯は白を貴重としたシンプルなデザインのヤツだった。
「あれ?お前美紗子ちゃんと別れた?」
 この中で一番付き合いの長い梶原が、不思議そうに眉をひそめて聞いてきた。
「え?別れてないけど。何で?」
「何でって、お前、前はボーダフォンだったろ?美紗子ちゃんがDokomoだからって携帯変えたんじゃなかったか」
「そうだっけ?」
 そうなんだよ!自分のことなのに覚えていないのだろうか、この男は。勉強面では素晴らしい記憶力を発揮してくださるのだが、私生活、ことに己のことになるとその記憶力や判断力等は極端に低下する。
「何でいきなりau?まぁ、今はauのが一番強いかもしんないけど」
「んー、高橋がauだったから」
「高橋?」
 誰だと首を傾げる乾に梶原がさらに怪訝な顔をした。
「高橋って、お前とルームシェアしてる奴じゃなかったか?」
「うん。最近高橋が携帯変えててさ。それがかっこよかったから同じのにしちゃった」
 えへへと可愛らしく笑う。普通男がこういう笑い方をしても気持ち悪いだけなのだが、藤代がすると何故か似合うから不思議だ。
「本当は高橋と一緒の黒が良かったんだけどね。それだとどっちがどっちのだか分からなくなるからせめて色変えろって言われちゃって白にしたんだー」
「それ新機種のヤツだよな。実は俺も狙ってたんだけど、まだ携帯変えてから1年もたってないからさー」
 さすがに1年たたずに機種変すると高くつく。
 いいなーと藤代の携帯を奪いとって見る森口だが、ふとあることに気付いた。
「あれ?ストラップも変えた?」
「あ、本当だ」
 他人の携帯のストラップまで覚えているとは、なかなか洞察力に優れているといっていいのか、暇人といっていいのか。しかしそんなことを気にする様子もなく藤代はさらりと爆弾発言をかました。
「あ、それ。高橋とおそろいなんだ」
 しーん。
 静寂、というか、沈黙、と言うか……。
 おもいっきり3人は引きまくった。
「……おそろい、なのか?」
「?うん。そうだけど?」
 不思議そうに首を傾げる。
 女同士ならまだ分からなくもない。同じ鞄を買ったり、おそろいのピンをつけてみたりする姿は仲が良いな~と思う。が、男同士でおそろいって、寒すぎる。しかも携帯も同機種。
 しかしそんな友人たちの心境にはまったく気づかない藤代はにこにことうれしそうにそのストラップを弄る。
「おまえの、同居人って……男、だよな?」
 いち早く復活しのは藤代と一番付き合いの長い梶原。この辺はさすがだ。多少顔を引き攣らせながら確認をとる。
「当たり前じゃないか。学校が提供してるアパートなんだし。半分寮みたいなところだよ?」
 それはそうだ。実際同じアパートには何人か同じ学校の人が住んでいる。
「あー、その……なんも言われなかった?高橋、だっけ?そのルームメイトに」
「何が?」
「いや、だから……そのストラップ、買うときに」
 携帯くらいなら同じのを持ってる人間は腐るほどいるから文句を言うこともないだろうが、ストラップとなれば別なんじゃないだろうか?
「元々高橋がつけてたのと同じのを俺が買っただけだから。見せたときはすっごく嫌そうな顔されたけど」
 酷いよねーと言って藤代は笑うが、他の3人は笑えなかった。
「あの、藤代さん」
 頬をかなり引きつらせながら梶原が藤代に声をかける。何故かさん付け。
「俺の記憶が正しければ、前に君がつけてたストラップは、彼女である美紗子ちゃんに貰ったやつじゃなかったかね?」
「あれ?そうだっけ?よく覚えてるなぁ~梶原は」
 あはははーと笑う藤代に、内心こっそり本気で殴りたくなった。
「『そうだっけ?』じゃねーよ!『K&M LOVEv』ってロゴ入ってただろ!しかも美紗子ちゃん手作り!」
 サイコロ状のアルファベットを紐で繋げて作る、割と簡単に出来るストラップ。付き合い始めたころに美紗子からプレゼントされたと言っていたのは目の前のこのアホ……もとい藤代のはずだ。
「や、でもあれ、もう結構ボロボロだったし……」
 視線を泳がせて言い訳がましく言う藤代に、何故か梶原はものすっごく嫌な予感がひしひしとした。
「ちなみにそのストラップ、どうした?」
「……捨て、ちゃった」
「………………」
 確実に一番酷いのは目の前にいるこの男だろう。


 とりあえず、先ほどの会話は聞かなかったことにして(心情的にそのほうがいい気がしたのだ。3人とも)昼食をとることにした。
 次の講義はなんだとか、この講義のあれが分からないだとか、昨日のドラマを見たかなどどうでもいい話をしていると、ブルブルと藤代の真新しい携帯が鳴った。
「あれ?高橋だ」
 さっきまで話題に上がっていた高橋クン。自然3人の視線が集中する。
 じっと携帯の画面を読んでた藤代がぽちぽちとボタンを打って返信をする。
「高橋クン、なんだって?」
 コンビニで買った菓子パンを口に運びながら乾が聞く。
「帰りにスーパーで卵買ってこいって。何かお一人様1パック限り98円で安いらしい。だからお前も買ってこいってさ」
 藤代がスーパーで買い物。
 ものすっごく似合わない。
「藤代をパシリに使う高橋……」
「結構な大物?」
 額を突っつき合わせる乾と森口を余所に、梶原がニヤリと笑った。
「藤代、その買い物俺たちも付き合ってやろうか?」
 何を言い出すんですかこの人は?
 そんな顔をする2人を軽く睨みつけて喋らせないようにする。
「お1人様1パックだろ?お前1人じゃあ1パックしか変えないけど、俺たち連れてったら4パック買えるぞ?」
 いや、卵4パックも買ってどうすんだよ?
 森口が突っ込みを入れる前に乾が面白がった。
「そうだな!そしたら高橋クン喜ぶかもよ?何しろ最近卵高かったし!」
 いやだからそんなに買っても腐らすだけだって……。
 森口は思ったが、2人に睨まれ結局それを口にすることは出来なかった。
 なんやかんやと2人に丸め込まれている藤代。
 高橋よろこぶかなぁ~などと呑気に言っている。
 確実に怒るだろう。
 結局、4人はスーパーで卵を買った後、梶原の提案で課題で出ていたレポートをやる、と言うのを口実に藤代のアパートに押しかけたのだった。
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